競争優位性から考える新規事業の立ち上げ方

競争優位性とは、「自社が選ばれる理由」を構築すること
新規事業を立ち上げる際、欠かせない視点の一つが「競争優位性」です。言い換えれば、「なぜそのサービスを顧客が選ぶのか」「他の選択肢ではなく、自社を選ぶ理由は何か」を構造的に説明できること。

競争優位性とは、単なる“他社との違い”ではなく、「顧客にとって意味のある差」である必要があります。
たとえば:
- 圧倒的な価格の安さ
- 他社にはない品質や機能
- 利用までのハードルが低い利便性
- 実績や信頼に基づく安心感
- 独自の設計やサービス設計 など
重要なのは、それが顧客の意思決定に直結する違いであるかどうかです。
競争優位性がなぜ重要なのか
競争環境が激しい今、「何が違うのか」が伝わらなければ選ばれません。特に、社内新規事業はリソースやスピードで不利な状況に立たされやすいため、明確な優位性を意識した設計が求められます。

競争優位性があると:
- 顧客にとっての「選ぶ理由」が明確になる
- 利益を生む“差”が継続的に維持しやすくなる
- 社内での意思決定(予算・リソース)を得やすい
- 過度な価格競争を避け、自社の価値を伝えやすくなる
- マーケティングや営業活動も戦いやすくなる
つまり、社外への強みとしてだけでなく、社内を動かす論拠にもなるのが、競争優位性です。
競争優位性を見つける3つの視点
競争優位性は、ただ“ひらめく”ものではありません。以下の3つの視点を使って、構造的に見つけていくアプローチが有効です。

1|市場構造から見る
- 競合は何社いるか
- どんな切り口で戦っているか
- 成長余地はあるか
- 参入障壁はどこにあるか
2|顧客視点で考える
- 顧客の困りごとは?
- 満たされていないニーズは?
- 他の選択肢と比べたときに、自社の提供価値は何か?
3|自社の強みを棚卸する
- 営業力、技術、顧客ネットワーク、ブランド、文化など
- 他社にはない“内側の資産”が外から見たときに価値になることも
顧客視点(ToC)からの優位性構築:課題にこそヒントがある
たとえば、ある製造業の顧客が「FAXでの発注業務が煩雑」と感じていたとします。
そこで、発注業務を自動化するツールを提供したところ、「業務効率の改善」に価値を感じて導入に至りました。
ポイントは、機能そのものではなく「顧客の面倒くささを減らした」点に価値があったこと。
競合が機能で勝っていても、選ばれる理由は他にある──それこそが競争優位です。
自社起点(ToB)の競争優位性:すでにある強みを活かす
自社の既存事業で培った資産を活かすことで、他社より一歩先からスタートできるケースもあります。
たとえば:
- 地域に強い営業網 → 初期の顧客獲得がスムーズ
- 自社インフラ(データ・工場など) → 他社はゼロから構築が必要
このように、「既にある資産 × 新しい価値提供」によって、模倣されにくい競争優位を生み出すことが可能です。
競争優位性が「あるように見える」場合の注意点
特許、技術、ブランドなどの“強み”を既に持っているケースもあります。しかし、強み=売れるとは限りません。
大切なのは:
- その強みが「どのニーズに刺さるのか」を検証すること
- 使う場面・文脈を設計してこそ“差別化”になるという視点
たとえば、AI技術を保有していても、それが実際に活用されるシーンが明確でなければ価値になりません。
競争優位性がない状態から、どう始めるか
「これといった強みがない」という状態でも、悲観する必要はありません。
むしろ、模倣されていない価値や、未開拓の顧客体験をつくる余地があるとも言えます。
- 小さな違い(スピード・対応力・デザインなど)を武器にする
- 顧客との対話から、“らしさ”を育てていく
- 継続的な改善の中で、競争優位性が徐々に形成されていく

優位性は、戦略的に“構築する”もの
競争優位性は、事前に「設計」する必要があります。
「誰に」「何を」「どうやって届けるのか」が一貫してはじめて、価値として伝わります。
- MVPで実際に刺さるかを検証する
- 初期ユーザーの声を聞き、微調整しながら価値を定義していく
- ブランド・UX・サポートなど、総合的な体験設計も含めて構築する
最後に:競争優位性は「見つけるもの」でなく「つくるもの」

重要なのは、「今、持っているかどうか」ではなく「これからどうつくるか」。
顧客課題を出発点に、自社の資産と重ね合わせて再現性ある“勝ち筋”を描いていきましょう。