トレンドから新規事業の種を見つける
― “流行”に飛びつくのではなく、“変化”と対話するアイデアのつくり方 ―

はじめに|”トレンド活用”の本質とは?
「最近流行りの○○を使って、何かできないかな?」 「トレンドは追っているけれど、どこか地に足がついていない気がする…」
新規事業の現場で、私たちAll Bridgeがよく耳にする声です。
トレンドに目を向けることは、新しい価値創造の糸口になり得ます。しかし、それが”流行”の表層にとどまってしまうと、短命なアイデアに終わってしまうことも少なくありません。
私たちが大切にしているのは、「流行っているからやる」のではなく、 「なぜ今、それが求められているのか?」という問いを持つこと。
本稿では、 トレンドを出発点としながらも本質に迫る、事業アイデアの見つけ方を解説します。
なぜ「トレンド」から考えるのか?

現代はVUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)と呼ばれる時代。変化は加速し、かつ複雑化しています。
たとえば:
- リモートワークが常態化し、企業文化や人材マネジメントに新たな問いが生まれている
- サステナビリティが叫ばれる一方で、「エコ疲れ」「グリーンウォッシュ」への懐疑も広がっている
- 生成AIの普及によって、”書く” “話す” “考える”の意味が問い直されている
これらの表面的なトレンドの背後には、常に新たな”問い”や”ずれ”が生じています。この”問い”こそが、新規事業を生む核であると捉えています。
トレンドから課題を見つける、4つのステップ

トレンドから課題を抽出する4つのステップをご紹介します。
1. トレンドを観察する
社会の空気を定点観測する──これはすべての出発点です。
ニュース、SNS、政策動向、消費行動、展示会、企業リリース、スタートアップ動向など、あらゆる領域からトレンドの兆しを拾い上げます。
事例:
- “静かな退職(Quiet Quitting)” の流行→ 若年層の価値観変化
- “AIライティングツール”の普及→ 業務効率ではなく、言語のあり方への影響
2. 行動の変化を仮説にする
トレンドが起きた”理由”を、行動と価値観の変化として仮説化します。
事例:
- D2Cブランドの台頭 → 企業ではなく「自分ごと」化された共感ストーリーへの期待
- Z世代の副業志向 → 収入よりも「個の成長」や「社会との接続」を重視
3. 変化に追いついていない領域を探す
制度・インフラ・仕組みの“時差”に注目することが重要です。
変化しているにも関わらず、支援サービスや社会構造が整っていない部分に、ニーズの空白が潜んでいます。
事例:
- キャリアの複線化が進む中、既存の人事評価や給与制度が追いついていない
- オンライン医療が浸透しても、メンタルケアの継続支援は制度的に乏しい
4. 感情に目を向ける
「怒り・諦め・戸惑い・違和感」といった感情は、強い原動力の兆候です。
事例:
- 「上司には言えないけど、誰かに話したい」→ ピア・サポート需要の台頭
- 「情報は多いのに、何が正しいかわからない」→ キュレーション型サービスの成長余地
トレンドに飛びついて失敗するパターン

過去にAll Bridgeが伴走してきた中でも、以下のような落とし穴に陥るケースがありました。
- “メタバース元年”に便乗し、体験設計が不十分なまま仮想空間サービスを開発
- “ウェルビーイング経営”を掲げたが、施策の内実が伴わず社員の納得感を得られなかった
これらは共通して、「誰の、どんな課題に応えるのか」が曖昧なまま推進された点にあります。
アイデアとは、「変化への応答」である
All Bridgeでは、アイデアを次のように定義しています。
アイデアとは、“変化”に対する誠実な応答である。
トレンドは、社会が変化しているというサインです。その背後にある「問い」や「ずれ」に、どのように応答するか。それこそが、事業アイデアの核になります。
問いかけ例:
- この変化の裏に、どんな不安・期待・怒りがあるのか?
- 既存の仕組みで“取り残されている”のは誰か?
- この変化は、社会にどんな再編をもたらすか?
まとめ|“流行”よりも、“変化の本質”に目を向けよう
- トレンドは、社会の価値観が動く“前兆”
- 表層的な流行ではなく、「問い」「ずれ」「感情」を読み解くことが重要
- アイデアは、“ひらめき”ではなく、“構造変化への応答”として生まれる
