CPF (Customer Problem Fit):顧客の「痛み」を捉える
「解決すべき価値のある課題」を特定|「答え」を見つけるフェーズではなく、「問い」を確かなものにする
新規事業の失敗理由の多くは、「そもそも顧客がいない」「市場ニーズがないこと」だと言われています。どれほど優れた技術や、社内の強力なアセット(資産)があったとしても、それが「誰の、どのような痛切な悩み」も解決しないのであれば、事業として成立することはありません。
フィットジャーニーのフェーズ2「CPF(Customer Problem Fit)」は、仮説の域を出て、初めて「顧客」に触れる極めて重要なステップです。
本記事では、社内新規事業を成功に導くためのCPFの進め方を解説します。

1. CPFの定義と目的
CPFとは、「ターゲットとする顧客が、解決するに値する深刻な課題(ペインポイント)を抱えていることを証明する」状態を指します。
多くの起業家や社内新規事業担当者は、解決策(ソリューション)のアイデアからスタートしてしまいます。しかし、CPFフェーズで優先すべきは「解決策」ではなく「課題」そのものです。「この課題が解決されるなら、どんなに高くても買う」と言わしめるほどの、切実な痛みを見つけ出すことがこのフェーズの唯一無二の目的です。
2. 「質の高い課題」を見つける3つのステップ
CPFを達成するためには、机上の空論を捨て、現場に飛び込み、声を聞く必要があります。以下の3つのステップで、課題の解像度を高めていきます。
ステップ1:ターゲットの特定
市場セグメントの中から、さらに具体的な「ペルソナ」を絞り込みます。年齢、役職、日々の業務ルーチン、評価指標、さらには個人的な野心や不安までを言語化し、「この人なら、この瞬間に困っているはずだ」という仮説を立てます。また、法人向けサービスの場合は、「どのような企業なのか」「担当者は誰なのか」といった点で明確にしていきます。
ステップ2:インタビューの設計と実行
課題を確認するための最も有効な手段は、インタビューです。アンケートのような定量調査だけでは、顧客の本音や「無意識の不満」を拾い上げることはできないため、インタビューとアンケートをうまく組み合わせながら顧客理解を深めていきます。
過去の行動を問うことで、顧客が「実際にお金や時間を使っているか」という支払い意欲(Will to Pay)の裏付けを取ります。
ステップ3:インサイトの抽出と「課題の深掘り」
インタビューから得られた発言を整理し、「なぜその課題が起きているのか?」を繰り返して掘り下げます(なぜなぜ分析)。
表面的な不満の裏にある、組織構造の問題、法規制の影響、あるいは心理的な障壁といった「真の原因」を特定します。
3. 社内新規事業特有の罠:「課題の捏造」
社内新規事業において、特に注意すべきなのが「ソリューション・ファースト」の罠です。自社に優れた技術や広大な販路がある場合、どうしても「そのアセットを使える課題」を探してしまいがちです。
結果として、顧客がそれほど困っていない些細な問題を「深刻な課題」であると自分たちに言い聞かせ、捏造してしまうことがあります。これは「課題の特定」ではなく「解決策への正当化」です。社内のリソースを活かすことは重要ですが、それはあくまでPSF以降の解決策の段階で考慮すべきであり、CPFでは純粋に「顧客の痛み」に向き合わなければなりません。
4. まとめ:次のフェーズ(PSF)へ進むために
CPFは「答え」を見つけるフェーズではなく、「問い」を確かなものにするフェーズです。もしインタビューの結果、想定していた課題が顧客にとって重要ではなかったと判明したなら、それは失敗ではなく「成功へのピボット」です。
「誰が」「何に」「なぜ」苦しんでいるのかを、チーム全員が確信を持って語れるようになった時、初めて解決策のプロトタイプ(PSF)を検討する準備が整います。

