顧客の声を事業に変える「MVP検証」~小さく試し、大きく育てる事業開発とは~

「完璧なプロダクト」を目指して、顧客不在のまま開発を進めていませんか?

All Bridge株式会社は、新規事業の成功確率を飛躍的に高める「MVP(Minimum Viable Product)検証」をテーマに、オンラインセミナーを開催しました。

本レポートでは、弊社代表取締役 水谷真人による講演内容をもとに、リソースが限られる社内新規事業において、「売れるもの」ではなく「学ぶこと」を最優先し、顧客の声を確実に事業へと反映させるためのMVP検証の具体的なステップと実践のポイントをご紹介します。

MVP検証の目的は「売ること」ではなく「学ぶこと」

まず、MVP検証の目的を正しく理解することが成功の第一歩です。

MVP(Minimum Viable Product)とは
最小限の労力、機能、コストで作られた「実用最小限の製品」を用いて、仮説検証を行う手法のこと。

MVP検証における最大の目的は、製品やサービスを「売ること」ではなく、顧客や市場から「学ぶこと」にあります。この目的が曖昧だと、デザインや機能の作り込みに時間をかけ過ぎてしまい、MVPの最大の武器である「スピード感」が失われてしまいます。

失敗のリスクが大きい従来型の開発とは異なり、MVP検証は段階的に小さく投資し、早期に軌道修正を行うサイクルを回すことが特徴です。一度で終わらせず、何度も繰り返すことが前提となります。

なぜ、社内新規事業にMVPが不可欠なのか

時間やコストが限られ、少人数で進めることが多い社内新規事業において、MVP検証は以下のような強力な推進力をもたらします。

  1. 社内信頼の獲得
    アンケート結果だけでなく、実際に「お金を払ってでも欲しい」という顧客の具体的な反応を示すことで、報告に説得力を持たせ、社内の信頼と協力を得るための重要なツールとなります。
  2. チームの成功体験
    簡単なプロトタイプでも、顧客からポジティブな反応を得ることは、チームにとって「これはいけるかもしれない」という貴重な成功体験となり、一体感を醸成します。
  3. 横断的な協力の獲得
    客観的な検証結果は、「その事業の将来性なら」と他部署を巻き込む際の強力な材料となり、組織の壁を越えた協力を引き出しやすくなります。

【目的別】最適なMVP手法の選び方

MVPには多様な手法が存在し、検証したい内容に応じて最適なものを選択することが重要です。

  • ペーパープロトタイプ
    PowerPointやFigmaなどで作成した画面イメージを顧客に見せ、反応を収集する最も手軽な手法。アイデアの初期検証に適しています。
  • コンシェルジュMVP
    WebサイトのUIなど顧客が触れる部分だけを作り、裏側の処理は人力で対応する手法。SaaSのようなサービス系の事業で、顧客価値を最小限の労力で検証する際に有効です。

手法を選ぶ際は、「何を検証したいか」「予算」「チームの制作能力」の3つの観点から総合的に判断します。そして、何よりも重要なのは「作り込みすぎない」こと。検証に必要な最小限の機能に絞り、顧客体験を優先して設計することが、効率的なMVP検証の鍵となります。

新規事業の成功確率を高めるMVP検証の3ステップ

MVP検証は、以下の3つのステップをサイクルとして回していくことで、その効果を最大化できます。

  1. ステップ1:仮説構築
    「誰に、どんな価値を提供するのか」、「顧客は今何に困っているのか」を整理し、「何を成功とするか」という成功指標(例:購買意思の有無、支払う金額の意思)を明確に設定します。作り始める前に、ここを明確にすることが肝心です。
  2. ステップ2:最小プロダクト
    検証に必要な要素を必要最小限に絞り込み、顧客の体験を優先してどう見せていくかを設計します。仕組みばかりを考えて顧客視点が抜け落ちないよう注意が必要です。また、検証内容によっては、一つの方法に絞らず複数案を平行で検討する姿勢も大切です。
  3. ステップ3:学習・改善
    デモ、SNS投稿による反応テスト、ベータ版配布、または単にインタビュー形式で使ってもらうなど、適切な方法で顧客に試してもらいます。その際、使いやすさ(体験の観察)だけでなく、利用時の感情の把握(驚き、不満など)や行動の分析(使用頻度、継続性)を把握することが重要です。検証で得られた情報は、定量的な分析(申し込み率、継続使用率など)と定性的な分析(利用者の印象や不満点)の両方をセットで実施します。集めたファクトから気づき(インサイト)を得て、次のネクストアクション(機能修正、情報提供タイミングの調整など)を決定します。このサイクルを回すことが、MVP検証の価値を最大化します。

やってはいけない!MVP検証における4つの落とし穴

最後に、MVP検証を進める中で陥りがちな「落とし穴」と、その回避策をご紹介します。

  1. 作り込みすぎる
    検証目的を忘れ、プロダクトの完成度を追求してしまうケース。達成感は得られますが、時間とコストを浪費する最も典型的な失敗です。
  2. 身内だけの評価で満足する
    社内レビューだけで満足し、実際の顧客にぶつけないケース。「まだ見せられるレベルではない」と恐れず、未完成でも勇気を持って顧客に当てることが重要です。
  3. 顧客接点がないまま進める
    「顧客に当ててみた」という事実だけで満足し、検証したかったことを明確にできていないケース。目的意識がなければ、貴重なフィードバックを得られません。
  4. 感覚的な判断で終わる
    検証結果をデータとして分析せず、「なんとなく良さそう」といった感覚で次の意思決定をしてしまうケース。必ず定量的・定性的な根拠に基づいて判断しましょう。

まとめ

本セミナーでは、不確実性の高い新規事業を成功に導くための羅針盤となる「MVP検証」について、その考え方から具体的な実践ステップまでを解説しました。

MVP検証 成功のポイント

  • 目的は「売ること」ではなく「学ぶこと」と心得る
  • 社内の信頼と協力を得るための「客観的データ」として活用する
  • 「仮説→設計→試行→分析→活かす」の5ステップを高速で回す
  • 「作り込みすぎ」「身内評価」などの落とし穴を避ける

All Bridge株式会社では、新規事業開発における一連のプロセス「フィットジャーニー」の伴走支援を行っています。

今回のテーマであるMVP検証はもちろん、事業が「市場の魅力」「競争優位性」「実現可能性」の3つの観点を満たせるよう、専門的な知見からサポートします。

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