
担当者の皆さま
味の素株式会社 NBD.comの皆さま
「新規事業には、正解がない。」
だからこそ、何をどこまで考えればいいのか分からず、漠然とした不安に包まれる。
それは、多くの新規事業の現場が抱える共通の悩みです。
味の素株式会社のバイオ&ファインケミカル事業本部が推進する社内新規事業プロジェクト「NBD.com」。この取り組みに、All Bridgeは各新規事業テーマへの伴走支援という形で並走してきました。
ワークショップと壁打ちを往復しながら、現場の皆さんが自らの手で事業を前に進めていく。そのプロセスの中で、何が変わったのか。
プロジェクトを推進する4名の皆さまにお話を伺いました。
1. なぜ「研修」でも「コンサル」でもなく、「伴走」だったのか
NBD.comを率いる広瀬様には、かねてより一つの課題意識がありました。
メンバーの多くが、何をどういう順番で考えて進めればいいのか分からないまま、手探りで新規事業に取り組んでいるのではないか。支援の必要性は感じつつも、自分がすべてをやれるわけではない。そんな時に出会ったのが、All Bridgeの伴走支援でした。
何をどういう順番で考えて進めていいか、半分ぐらいの人はあまり分からないままやっているんじゃないか、という印象がずっとありました。何か支援してあげないといけないけれど、自分が全部やれるわけでもない。そういう時にお話をいただいて、『これだ』と思ったんです。
広瀬様が「これだ」と感じた理由は、既存の選択肢との違いにありました。
研修も色々考えたのですが、机上の訓練みたいなところがある。コンサル会社に依頼することも考えましたが、上から色々言われるイメージがありました。今回は、自分のテーマをやりながら、その中の問題点を一緒に考えてもらう。考える順番や、間々でのレクチャーもある。非常にいい形になったと思います。
「学ぶこと」と「事業を進めること」が分かれていない。この一体感こそ、伴走支援ならではの価値でした。
2. 「漠然とした不安」が、「道しるべ」に変わった
伴走が始まると、メンバーが最初に直面していた「見通しの利かない不安」が、少しずつほどけていきました。
何から手をつければいいのか、どこまで考えるべきなのか。初めての挑戦だからこそ、責任感の強いメンバーほど、あらゆることを同時に抱え込んでしまいます。
この状況が、伴走支援を通じて大きく変わったと杉浦様は話します。
最初は、見通しが利かない不安がありました。しかし、伴走いただきながら一緒にテーマに取り組む中で、道しるべが見えてきました。どこまで進められていて、どこが足りていないのかを掴めるだけでも、不安感が大きく変わりました。とりわけ大きかったのは、「今やること」と「今はやらないこと」が整理されたことでした。
初めてのことに挑む時に、まだ取り組まなくてもよいことが明確になっているのは、大きな安心材料でした。今はここまで考えればよく、この先は次の段階で考えればよい。そうした整理がなされていることで、考えが混線しなくなります。チーム全体がまず足元を見るべきことに集中して、前に進む、その機動力を発揮する上で一番大事なことだったと思います。
3. メンバーが、「自分ごと」で事業を動かすようになった
不安が道しるべに変わっていく中で、メンバーの一人ひとりにも確かな変化が生まれていきました。
NBD.comの立ち上げを担った髙木様は、あるメンバーの変化を、手応えとともに振り返ります。
ある1人のメンバーは、周りから見てもとても変わったと思います。本人も変わったという自覚があると思います。
その変化を支えたのが、テーマを何度も回していく反復のプロセスでした。一度取り組んだテーマを、次は違う角度から。さらにその次は、自分たちのテーマとして実装できるかどうかまで踏み込んでいく。
このサイクルを重ねることで、事業が「自分ごと」として深く落とし込まれていきました。
実質、3周くらい新規事業を回している感覚があります。最初のテーマを別の角度からやり、今は自分たちのテーマで実装できるかどうかまでやっている。自分ごとに落とし込めていて、やりやすくなっていると思います。チームのメンバーも『あの時のあれだよね』という共通言語が一つできているので、進めやすいですね。
4. 「うまい・勝てる・できる」 — 現場に生まれた共通言語
伴走支援を通じて現場に定着したものの一つが、「共通言語」でした。
中でも象徴的だったのが、「うまいか・勝てるか・できるか」という3つの視点です。この判断軸が、チーム内はもちろん、上位マネジメント層との対話でも使われるようになっていきました。
その手応えを、杉浦様はこう語ります。
上位マネジメント層にあるプロジェクトについて議論した際も、結局は『うまいか・勝てるか・できるか』という視点になります。共通言語をいただいたことで、コミュニケーションがとてもしやすくなっています。
この3つの視点は、相手を見極めるための道具にもなりました。提案する相手が3つのうちどれを最も重視するのかが分かれば、資料や説明の重心をどこに置くべきかが見えてきます。
武井様は、その効果を具体的に説明します。
ある方は市場性、どれだけ売れるかを気にされる。ある方は『自社ならではの技術を持っているのか、何が強みなのか』という勝てるかどうかを気にされる。それぞれ違う。それが、「うまいか・勝てるか・できるか」で判断・評価できるようになり、どのボタンを押せば提案が通りやすいのかが分かりやすくなりました。チームメンバー内で認識を合わせるという意味でも、共通言語があるのはありがたいです。
チーム内に共通言語が一つあること。
それによって、多様で異なるバックグラウンドを持つメンバーであっても、同じ目線で議論に加わり、論点をすぐに整理できるようになっていきました。
5. 「数字で語る」文化が、議論を前に進めた
もう一つの変化は、「数字で語る」ことが当たり前になったことでした。
武井様は、その効果をこう振り返ります。
我々の考えを既存事業部に伝える時に、数字で話すことができるのが大きかった。数字で語ると、同じ目線で話ができる。新規事業の数字と既存事業の数字、そして全体計画の中で何パーセント埋められるか。そういう話になったので、チーム間のディスカッションもとてもスムーズになりました。
感覚や勢いだけに頼らず、数字という共通の物差しで語ることもできる。それによって、議論は「誰の声が大きいか」ではなく「何が事業を前に進めるか」を軸に回るようになっていきました。
6. ワークショップと壁打ちの「リズム」が、自分ごと化を生んだ
伴走プログラムで最も評価が高かったのが、その「構成」でした。
学びをインプットするワークショップと、自分たちのテーマを持ち込んで相談する壁打ち。この2つを往復するリズムが、参加者の自分ごと化を強く後押ししました。
伴走担当と運営事務局の双方に関わった杉浦様は、こう語ります。
一緒に伴走していただいたプログラムは、構成が非常に良かったです。ワークショップとファシリテートいただくリズムが一番良くて、自分ごと化しながら相談の壁打ちもできる。そのサイクルが本当に良かったです。
さらに、このプログラムは決まった型を押しつけるものではありませんでした。各テーマの状況や進捗、その時々のポイントに合わせて、内容が柔軟に調整されていきました。
弊社側のテーマの状況や進捗、勘所になるポイントに合わせて、うまくプログラムをアジャストいただいた。ワークショップ中のディスカッションも拾ってくださって、では次の壁打ちはこう、プログラムはこう、と組み立ててくださる。そこが本当に良かったポイントだと思います。おそらく、参加した全員が同じように感じているはずです。
7. 新規事業が、「本流の成長」につながっていく
伴走支援を重ねる中で、プロジェクトそのものの位置づけも変わってきました。
新規事業は「出島」として本流と切り離され、成長と別扱いになりがちです。しかしNBD.comは今、新規事業のプロジェクトが成長戦略と融合するフェーズにあります。
プロジェクトそのものがドライバーとなって、事業本体の成長につながり始めています。伴走してきたAll Bridgeの側から見ても、それは大きな進化でした。
その手応えは、実際の事業展開にも表れています。海外市場展開に向けた取り組みでは、現地サイトとの週次のコミュニケーションも活発化し、先方から次々と機会や企画が寄せられるようになりました。
杉浦様はその状況を「贅沢な忙しさ」と表現します。
おかげさまで、爆走しています。海外の現地メンバーとも週次でやり取りしていて、先方から『こんなチャンスがある、こんな企画はどうか』と提案が寄せられます。それに対して日本サイドでどう考え、どう判断するかを議論する、そんなラリーが続いています。すごく贅沢な忙しさです。
この背景にあったのが、伴走を通じて磨かれた「型」でした。
具体的な提案として通用する共通の型ができたことで、相手からもコミュニケーションを求められるようになったのです。開発グループを統括する広瀬様も、伴走を振り返って、その成果を実感しています。
自分のテーマを進めるためにやっているので、お互いの進捗状況を確認しながら、どのテーマも進んだ。それがすごく良かったですね。皆さんがどう考えて、どう進めればいいかも分かりました。
8. そしてその先へ
プロジェクトは、次のステージを見据えています。これから新しく加わるメンバーや初見の相手に向けたプレビュー、マネジメント層への説明という、これまで積み上げてきたものが試される場面があります。
武井様は、その意味をこう語ります。
我々の積み上げてきたものが試される時だと思っています。初見の方が見るプレビューやマネジメントの場で、どれだけ思い描いた通りのことができるのか。そのフィードバックをいただきながら、ブラッシュアップしていきたいです。
個人の想いに支えられてきた取り組みを、会社全体の成長戦略へと確かにつなげ、組織として続いていく仕組みにしていく。その挑戦は、これからも続きます。
All Bridgeとしても、引き続きチームの一員として並走していきます。
全体まとめ
私たちが大切にしたのは、「答えを渡す」のではなく「一緒に道しるべを見つける」ことでした。皆さまが自らのテーマに向き合い、数字で語り、共通言語で対話しながら前に進んでいく。その伴走者であり続けることが、私たちの役割です。
プログラムをテーマの状況に合わせて調整できたのも、皆さまが本気で事業と向き合ってくださったからこそでした。
今後もNBD.com、そして味の素株式会社の挑戦がより大きな成長につながるよう、チームの一員として並走してまいります。
事務局メンバー