
担当者の皆様
介護の現場で、「論理的に考える」ことを学ぶ意義とは何か。答えは、現場マネージャーたちの変化の中にありました。
「利用者が定着しない課題をフレームワークで分解し、チームで解決策を導き出す。」
「職員へのフィードバックの仕方が変わり、会議での対話の質が変わる。」
そしてその変化は、一人の学びではなく、”一緒に学んだ仲間がいる” という事実によって、より深く組織へと根づいていきました。
居宅介護支援や地域密着型通所介護、鍼灸・訪問リハビリマッサージなど、地域に根ざした介護サービスを展開するスマイルクリエーショングループ。
そのミドルマネージャー層を中心に、All Bridgeが約1年にわたって実施した研修プログラム「スマイルアカデミー」。クリティカルシンキング・リーダーシップ・キャリアをテーマに、実業務と重ねながら展開したプログラムが、現場に「思考の習慣」を届けるまでの取り組みを、参加者の嶋崎様・岩田様に振り返っていただきました。
1. はじまりは「もっと成長が必要だ」という感覚
スマイルアカデミー導入の背景には、組織としての危機感があった。現場での柔軟性や対応力が高いメンバーが活躍している一方で、「なぜそのような関わりが必要なのか」、論理的に課題を整理し、チームを動かすリーダーが育ちにくい現状がありました。そんな状況に、経営陣も、現場マネージャー自身も薄々気づいていました。
岩田様は、田中社長からの愛のこもった言葉からこう振り返ります。
社長からずっと言われていたんです。『感情でしか動けていない。もっと勉強しなさい』と。クリティカルシンキングについては本を読んで独学もしていましたが、正直よくわかっていませんでした。モヤモヤしていたタイミングに、ちょうどこの講座が始まりました。
嶋崎様も同様の課題意識を持っていました。
自分から考えて動けるリーダーが少なかった。学ぶ場を会社の中に作りたいという思いが、長くありました。
コロナ禍の収束とともに「対面での学び」への渇望も高まっていました。田中社長の依頼を受け、All Bridgeはまず単発の講義を実施。その手応えをもとに、複数のテーマを連続するプログラムとして設計し直しました。それが今となれば、スマイルアカデミーの出発点となっています。
2. 設計の核心は「インプット10分、残りは全員で考える」
All Bridgeがプログラムを設計するうえで最も重視したのは、「教える場をつくる」ではなく、「学びが起きる環境をつくること」でした。インプットは10分にとどめ、10分で得た内容をすぐに自分なりにグループワークで使ってみる。
クリティカルシンキング研修では、フレームワーク(ヒト・モノ・カネなどの分類軸、理想と現実のギャップの分析など)を題材に、実際の職場の課題を参加者同士で分解・議論する形式を取りました。リーダーシップ研修では、多様なリーダーシップスタイルを学びながら、自己と他者の違いに気づくワークを組んでいました。
岩田様はこの形式をこう評価します。
インプットで暗記するよりも、得た知識でアウトプットするグループワークの方が何倍も自分の学びになります。グループワークで出た会話は今でもちゃんと覚えています。実体験として体に染みついているんだと思います。
さらに、理解が曖昧な参加者にはマンツーマンで補講を行うなど、学びのスピードに合わせた個別サポートも提供しました。
嶋崎様はその時間についてもこう振り返ります。
補講の時間が本当に楽しかったです。自分のモヤモヤをその場で解消できる。それがすごくありがたかったです。
3.「手を挙げ続けた」二人が場の空気を変えた
いくら良質なプログラムを設計しても、参加者が受け身のままでは学びは起きません。スマイルアカデミーでその役割を担ったのが、嶋崎様と岩田様のお二人でした。
岩田様は初回から、意図を持って行動していました。
みんなが発言しやすい空気を作るために、とにかく最初から率先して手を挙げようと決めていました。自分が先に思ったことを口にしておけば、みんなが言いやすくなる。当てられて答えるのではなく、言いたいから手を挙げる雰囲気にしたかったんです。
嶋崎様もその動きに呼応しました。
たくみくん(岩田様)が最初に動いてくれたから、私もついていけました。二人で場を作っていく感じでしたね。
その結果、はじめは消極的だった方も自分から手を挙げるようになり、全体の熱量が上がっていきました。学びが本格的に深まったのは、プログラムが進むにつれて「前傾姿勢で聞く」雰囲気が会場に根づいてからでした。
業務終了後に自主的に集まり、宿題をチームで取り組む姿もありました。嶋崎様はそのことをこう話します。
残業でもないのに、みんなが自分の学びのために残る。それがすごく嬉しかったです。社会人になってから、あんな場はなかなかないと思います。
4.「クリシンの共通言語」が現場の課題解決を変えた
約1年の学びを経て、現場に戻った参加者たちに何が変わったか。
それは数字や制度ではなく、「考え方」と「対話の質」でした。
嶋崎様の事業所では、デイサービスの利用者定着率が課題になっていました。担当マネージャーの中村氏は、ヒト・モノ・カネのフレームワークを用いて原因を分解し、改善可能な領域から優先順位をつけて手を打ち始めました。嶋崎様はその経緯をこう話します。
サービスの質、接遇、設備の問題……フレームワークで洗い出して、今できることを一つ選びました。それが相談員制度の設置につながって、今も動いています。
岩田様にとっては、思考の「癖」そのものが変わりました。
以前は、何かあるとそのことだけを考えてしまっていました。今は一歩引いて、全体を俯瞰してから考える癖がつきました。人の話を聞くときも、『この人はどの視点から見ているんだろう』と常に意識するようになりました。人の話に被せることをやめ、相手の話を最後まで聞いてから応じる習慣が身につきました。職員へのフィードバックも変わりました。
「なぜそうなっているのか」を構造的に捉えたうえで、一緒に改善策を考えるスタイルへ。嶋崎様はこう言い表します。
理想と現実のギャップを見つけることが、自分のマネジメントのベースになっています。誰かが悩んでいるときも、まず『あなたの理想の状態は何か』から聞き出していくようになりました。
5. 得たのは「知識」ではなく「仲間」だった
スマイルアカデミーを通じて得た1番のものは何か。意外な答えが返ってきました。
岩田様はこう話します。
一番得たのは、スマイルクリエーショングループの仲間たちです。それまではほぼ交流のなかった所長クラスの方々と、学びを通じて一気に打ち解けました。その後の仕事でも、あの仲間がいるから共通言語で話せます。
嶋崎様も同じ価値をこう語ります。
自分だけで学んでいると孤独なんです。でも同じ会社にこれだけ前向きな仲間がいると知ることができました。その孤独感がなくなったことが、私には一番大きかったです。
「一緒に学んだ仲間だからこそ、共通言語で課題を話せる」
これは単なる副産物ではなく、プログラム設計の核心でもありました。All Bridgeは講師と受講生という関係ではなく、「学びを共に作るチーム」として関わることを一貫して大切にしてきました。参加者の皆さんがその精神を体現してくださったことで、プログラムが生み出す価値は、設計当初の想定を超えていきました。
6.「学び続ける組織」へ – 家族のような共同体を目指して –
スマイルアカデミーの約1年が終わっても、参加者たちの学びへの姿勢は変わりません。
「またこういう場が欲しい」という声も上がっています。
嶋崎様は組織の未来をこう描きます。
最後まで一緒にいたいと思える仲間がいる組織が理想です。仕事で過ごす時間は長い。その時間をいい仲間と過ごせるなら、それはすごく幸せなことだと思っています。
岩田様も同じ方向を向きます。
自分がなりたい姿とのギャップを感じるからこそ、学ぶ。そのサイクルを持てる仲間が増えれば、組織全体が強くなると思っています。
「感情」を武器に持ちながら、「論理」という道具を手に入れたお二人。
その変化は今、後輩スタッフへの関わり方、チーム全体の対話の質として、組織の中に静かに広がり続けています。
まとめ
スマイルアカデミーを通じて私たちが一番学んだのは、「いい学びの場は、受講生自身が創っていくものであり、私たちの役割は『その学びが起きる環境をつくること』である」ということです。
お二人が率先して手を挙げ、学びの空気を作り続けてくださったこと。
それが今の弊社のプログラム設計の原点になっています。
講師と受講生という関係を超え、同じチームとして学びを作り上げた経験は、私たちにとっても大切な財産です。
お二人、そしてスマイルクリエーショングループがさらなる価値を多くの方々に届けていくことを願いながら、私たちも「学びを価値に変える」伴走者として、ともに歩んでいきたいと思います。